ワークエンゲージメントとは?従業員の働きがいを高める方法を解説

ワークエンゲージメントは、従業員が仕事に対して活力や熱意を持ち、主体的に取り組む心理状態を指します。生産性向上や離職率低下など、組織と従業員双方にメリットをもたらすこの考え方は、働き方改革が進む現代において重要性を増しています。

本記事では、ワークエンゲージメントの意味から測定方法、高めるための具体的な施策まで、実践に役立つ情報を詳しく解説します。

ワークエンゲージメントとは

ワークエンゲージメントという言葉は、近年多くの企業で注目を集めています。ここでは、ワークエンゲージメントの基本的な意味と、なぜ今この考え方が重視されているのかについて解説します。

ワークエンゲージメントの意味

ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して前向きで、イキイキと取り組んでいる心理的な状態を指します。単に「やる気がある」というだけでなく、仕事を通じて自分の力を発揮し、成長を実感できている状態です。

この概念は、オランダのユトレヒト大学の研究チームによって提唱されました。彼らは、ワークエンゲージメントを「活力」「熱意」「没頭」という3つの要素で構成されると定義しています。活力は仕事に向かうエネルギーや粘り強さ、熱意は仕事に誇りや意義を感じていること、没頭は仕事に深く集中し時間を忘れて取り組める状態を意味します。

従来の「従業員満足度」や「モチベーション」とは異なり、ワークエンゲージメントは単なる満足や一時的なやる気ではありません。仕事を通じて自分自身の価値を感じ、組織の目標とも強く結びついている点が大きな特徴です。

ワークエンゲージメントが注目される背景

ワークエンゲージメントが注目される背景には、働き方や社会の変化があります。多くの企業が人材不足や離職率の上昇、従業員のメンタルヘルス不調といった課題に直面する中で、従業員一人ひとりが仕事にやりがいを感じ、主体的に働くことの重要性が再認識されてきました。

また、グローバル化やデジタル技術の進展により、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。新しい価値を生み出し続けるためには、従業員が自ら考え、行動し、創造性を発揮できる職場づくりが欠かせません。

さらに、働き方改革や多様な働き方の推進が進む中で、単に「長く働く」ことよりも「いかに充実して働くか」が重視されるようになりました。ワークエンゲージメントは、従業員の心身の健康や職場の活性化にもつながるため、企業の持続的な成長や競争力強化の観点からも重要な要素となっています。

ワークエンゲージメントの3つの構成要素

ワークエンゲージメントは、「活力」「熱意」「没頭」という3つの構成要素から成り立っています。これらはそれぞれ異なる側面から、働く人の心の状態や仕事への向き合い方を表しています。

活力(Vigor)

活力とは、仕事に取り組む際のエネルギッシュな感覚や、疲れを感じにくい状態を指します。毎日の業務で「やる気が湧いてくる」「困難な状況でも前向きに挑戦できる」といった気持ちが続くことが、活力が高い状態です。

活力があると、多少のストレスや忙しさがあっても、心身ともに元気なまま仕事に向き合えます。朝起きたときに「今日も仕事を頑張ろう」と自然に思えるのは、活力が十分に備わっている証拠です。活力は、ワークエンゲージメントの土台となる要素であり、日々の生活習慣や職場環境、周囲との関係性などが大きく影響します。

熱意(Dedication)

熱意は、仕事に対して強い誇りや意義を感じ、心から打ち込める気持ちを表します。自分の仕事が誰かの役に立っている、社会に貢献していると実感できるとき、人は自然と熱意を持って働くことができます。

熱意が高い人は、困難な課題にも前向きに取り組み、失敗してもあきらめずに挑戦し続けます。熱意は単なる「好き」という感情だけでなく、仕事に対する使命感や責任感とも深く結びついています。熱意が高まることで、仕事に対する満足感や達成感も大きくなり、ワークエンゲージメント全体の向上につながります。

没頭(Absorption)

没頭とは、仕事に夢中になり、時間を忘れて集中できる状態を指します。作業に取り組んでいるうちに、気がつけば数時間があっという間に過ぎていた、という経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

没頭しているときは、周囲の雑音が気にならず、目の前の仕事に全力で取り組むことができます。仕事そのものが楽しく感じられ、達成感や充実感を得やすくなります。没頭は単に集中力が高いだけでなく、仕事に対する興味や好奇心が強いことも関係しています。

ワークエンゲージメントと類似概念との違い

ワークエンゲージメントには似たような言葉も多く存在します。ここでは、従業員エンゲージメントや従業員満足度、ワーカホリズムといった概念との違いについて整理します。

従業員エンゲージメントとの違い

ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントは、どちらも従業員が組織や仕事に対してどれだけ前向きに関わっているかを示す言葉ですが、焦点が異なります。

ワークエンゲージメントは、主に仕事そのものへの熱意や没頭、活力といった「働くこと自体」に対する心理的な状態を指します。一方、従業員エンゲージメントは、組織全体への愛着や信頼、貢献したいという気持ちなど、「会社やチーム」とのつながりを重視します。つまり、ワークエンゲージメントは仕事への没頭度合い、従業員エンゲージメントは組織への愛着に焦点がある点が違いです。

従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)との違い

従業員満足度は、従業員が職場環境や待遇、福利厚生などにどれだけ満足しているかを測る指標です。給与や休暇、職場の人間関係といった「外的な条件」に対する評価が中心となります。

これに対してワークエンゲージメントは、満足度だけでなく、仕事に対する前向きなエネルギーや熱意、没頭といった「内面的な充実感」に重きを置いています。満足しているだけではなく、自ら進んで仕事に取り組み、成長や達成感を感じているかどうかが重要です。従業員満足度は職場環境への評価、ワークエンゲージメントは仕事への情熱や活力といった積極的な心理状態を示す点が異なります。

ワーカホリズムとの違い

ワーカホリズムは、いわゆる「仕事中毒」とも呼ばれ、仕事に過度に没頭しすぎてしまう状態を指します。自分の意思とは関係なく仕事をやめられない、休むことに罪悪感を感じるなど、心理的な負担やストレスが大きくなりやすいのが特徴です。

一方、ワークエンゲージメントは、仕事に熱意や活力を持って前向きに取り組む状態であり、心身の健康やバランスも保たれています。ワーカホリズムは過剰な働き方による弊害が生じやすいのに対し、ワークエンゲージメントは健全な働きがいを感じながら、持続的にパフォーマンスを発揮できる状態を目指すものです。

ワークエンゲージメントの測定方法と尺度

ワークエンゲージメントを正しく理解し、組織で高めていくためには、現状を客観的に把握することが大切です。ここでは、代表的な測定尺度とその活用方法について解説します。

UWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度)

ワークエンゲージメントの測定方法として世界的に広く使われているのがUWESです。これはオランダのユトレヒト大学で開発され、「活力」「熱意」「没頭」の三つの側面から、合計9項目または17項目の質問で構成されています。

各項目について「どのくらい当てはまるか」を7段階で回答する形式で、数値化されたスコアで個人や組織の状態を把握できます。UWESの特徴は、単なる満足度やストレスの有無ではなく、仕事に対する前向きな心理状態を測定できる点です。国際的な比較や学術研究でも多く利用されており、信頼性と妥当性が高い尺度として評価されています。

新職業性ストレス簡易調査票

日本国内でワークエンゲージメントを測定する際によく活用されているのが、新職業性ストレス簡易調査票です。これは厚生労働省が推奨している調査票で、従業員のストレスチェックや職場環境の改善を目的としています。

調査票には職場のストレス要因や心身の健康状態だけでなく、ワークエンゲージメントに関する設問も含まれており、「活力」「熱意」「没頭」を数値で評価できます。法令に基づくストレスチェック制度にも対応しているため、企業が定期的に従業員の状態を確認しやすいというメリットがあります。

測定結果の活用方法

ワークエンゲージメントの測定結果は、単に現状を知るためだけでなく、組織の成長や従業員の働きがい向上に役立てることが重要です。

まず、測定結果をもとに部署や職種ごとの傾向を分析することで、どこに課題があるのかを明確にできます。活力が低い部署では業務負荷の見直し、熱意が低い場合は目標設定や評価制度の改善など、具体的な施策を検討しやすくなります。また、定期的に測定を繰り返すことで、施策の効果を数値で確認でき、PDCAサイクルを回しやすくなります。個人ごとのスコアをフィードバックし、上司との面談やキャリア支援に活用することで、一人ひとりの働きがい向上にもつなげられます。

ワークエンゲージメントを高めるメリット

ワークエンゲージメントを高めることには、組織と従業員の双方にとって多くのメリットがあります。ここでは、主に4つの観点からその効果をご紹介します。

生産性の向上

ワークエンゲージメントが高い従業員は、自分の仕事に対して前向きな気持ちを持ち、積極的に行動する傾向があります。そのため、日々の業務に集中しやすくなり、効率的に成果を出せるようになります。

業務の優先順位を自ら考えたり、課題に対して自発的に解決策を見つけたりする力が高まります。こうした姿勢が職場全体に広がることで、チームや組織全体の生産性も向上していきます。また、仕事の質にもこだわるため、ミスやトラブルの発生も減りやすくなります。

離職率の低下

ワークエンゲージメントが高まると、従業員は自分の仕事や職場に対して愛着や誇りを持つようになります。そのため、転職や退職を考えることが少なくなり、長く働き続けたい気持ちが強くなります。

特に近年は人材の流動化が進み、優秀な人材の確保や定着が大きな課題となっていますが、エンゲージメントの向上はこの課題を解決する有効な手段となります。離職率が下がることで、採用や教育にかかるコストも削減でき、職場のノウハウや経験も蓄積されやすくなります。

従業員の心身の健康増進

ワークエンゲージメントが高い状態は、従業員の心と体の健康にも良い影響を与えます。仕事にやりがいや充実感を感じていると、ストレスを感じにくくなり、心のバランスが保ちやすくなります。

前向きな気持ちで働くことで、疲労感や不安感も軽減されやすくなります。こうした心の健康が保たれると、体調不良による欠勤や休職も減り、安定して働き続けることができます。健康的な職場環境が広がることで、従業員同士のコミュニケーションも活発になり、相互に支え合う雰囲気が生まれます。

組織の活性化とイノベーション創出

ワークエンゲージメントが高い職場では、従業員一人ひとりが自分の意見やアイデアを積極的に発信しやすくなります。これにより、職場に新しい風が吹き込み、組織全体が活性化します。

多様な視点や発想が生まれることで、今までにない新しい取り組みやサービスの開発につながることもあります。イノベーションが生まれる土壌が整うことで、変化の激しい時代にも柔軟に対応できる強い組織へと成長していきます。

ワークエンゲージメントを高める具体的な施策

ワークエンゲージメントを高めるためには、日々の働き方や組織の仕組みに工夫を加えることが大切です。ここでは、現場で実践しやすい具体的な施策を4つの観点からご紹介します。

業務の裁量権拡大と適切な目標設定

従業員が自分の仕事に主体的に取り組めるようにするためには、業務の進め方や意思決定に一定の裁量を持たせることが重要です。自分で考え、判断しながら仕事を進めることで、責任感や達成感が生まれ、仕事への前向きな気持ちが育まれます。

ただし、裁量権を与えるだけでなく、明確で現実的な目標を設定することも欠かせません。目標が曖昧だったり、達成が難しすぎたりすると、逆にモチベーションが下がってしまうこともあります。個人やチームの状況に合わせて、段階的に目標を設定し、進捗を確認しながら柔軟に調整することが大切です。

1on1ミーティングとフィードバックの実施

上司と部下が定期的に1対1で話す1on1ミーティングは、信頼関係を築き、従業員の成長を後押しする有効な手段です。1on1の場では、業務の進捗や悩みだけでなく、キャリアの希望や日々の気持ちについても率直に話し合うことができます。

上司は部下の話を丁寧に聞き、努力や成果をしっかり認めることが大切です。また、具体的なフィードバックを伝えることで、従業員は自分の強みや課題を客観的に理解でき、次の行動につなげやすくなります。こうした対話の積み重ねが、従業員の安心感や信頼感を高め、仕事への前向きな姿勢を引き出します。

コミュニケーションの活性化

職場でのコミュニケーションが活発になると、チームワークが強まり、仕事のやりがいも大きくなります。日常的な声かけや情報共有を意識することで、従業員同士の距離が縮まり、相談や協力がしやすい雰囲気が生まれます。

また、部署や役職を超えた交流の場を設けることも効果的です。たとえば、ランチミーティングや社内イベントなど、気軽に話せる機会をつくることで、普段関わりの少ないメンバーともつながりができます。コミュニケーションが円滑になると、困ったときに助け合える関係が築かれ、心理的な安心感も高まります。

働き方改革の推進

ワークエンゲージメントを高めるためには、従業員が無理なく働き続けられる環境を整えることも欠かせません。働き方改革の一環として、柔軟な勤務時間やテレワークの導入、有給休暇の取得促進など、従業員の多様なライフスタイルに合わせた制度を整えることが求められます。

仕事とプライベートのバランスがとれることで、心身の健康が守られ、仕事への意欲も高まります。また、業務の効率化やムダの削減にも取り組むことで、長時間労働を防ぎ、従業員が本来の力を発揮できる環境をつくることができます。

まとめ

ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して活力や熱意、没頭を感じながら主体的に働く状態を指します。近年、働き方が多様化する中で、働きがいや充実感を持って仕事に取り組むことの重要性が高まっています。

ワークエンゲージメントは「活力」「熱意」「没頭」という3つの要素から成り立っており、従業員エンゲージメントや従業員満足度、ワーカホリズムなど類似する言葉とは、意味やアプローチが異なります。UWESや新職業性ストレス簡易調査票などの尺度を活用することで、現状を客観的に把握し、組織の課題を明確にできます。

ワークエンゲージメントを高めることで、生産性の向上、離職率の低下、従業員の心身の健康増進、組織の活性化など多くのメリットが得られます。具体的な施策としては、業務の裁量権拡大、1on1ミーティングの実施、コミュニケーションの活性化、働き方改革の推進などが効果的です。

従業員がイキイキと働ける環境づくりに取り組むことで、組織全体の活力や創造性が高まり、より良い成果につながります。ぜひ本記事を参考に、自社のワークエンゲージメント向上に向けた取り組みを始めてみてください。

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