
企業において、総務部は幅広い業務を担っており、会社規模によってはバックオフィス全般の業務を対応することもあります。
また、総務部は多くの経費を使用する部署でもあり、その金額は人事部に次いで2番目ともいわれています。
オフィス運営、設備管理、備品調達、通信・光熱費の管理など、管理すべき業務の範囲が広く、日常的に社内のお金を動かす部署だからこそ、総務部は経費削減の取組を避けて通れません。
一方、経費削減で行われがちな取組は「経費削減=節約」という捉え方によるものです。
無理なコストカットや場当たり的な節約は、短期的な数字には成果が表れるかもしれませんが、長期的には社員のモチベーションや業務品質の低下を招く危険性があります。
本来の経費削減は支出を抑えることだけでなく、業務の質や効率を高めながらコスト構造を改善することにあります。
経費削減の施策は、「成長のための投資」として、長期的な視点をもって進めることで、企業全体の生産性や利益率向上につなげていくことが大切です。本記事では、総務アウトソーシング・コンサルティングサービスを25年以上提供しているゼロインが、経費削減・コストカットで見直したいポイントを解説します。
目次
経費削減・コストカットの目的利益率の向上業務フローの改善社内連携の促進経費削減・コストカットのポイント見直し基準の設定 優先順位の決定固定費と変動費の分離業務品質の確保オフィス関連費を削減する方法オフィス面積の最適化家賃・管理費の価格交渉バックオフィス体制に関わる費用を最適化する方法人員構成の見直し業務の自動化・効率化購買コストを削減する方法購入方法の工夫利用ルールと管理の徹底IT・システム関連費用を削減する方法契約・利用状況の精査システム統合による効率化水道光熱費・通信費を削減する方法設備・契約の見直し社内での意識徹底会議・出張交通費を削減する方法比較サイトの活用出張計画の最適化外部サービスを活用した専門的な経費削減の紹介総務アウトソーシングで実現するコスト削減総務コンサルティングで実現するコスト削減自律型総務の構築で実現する持続的な経費削減経費削減の際に陥りがちな失敗とその回避策短期成果偏重のリスク効果が不明瞭経費削減・コストカットの成功事例と実践ポイント給茶機廃止によるコスト削減事例:年間約20万円(改善前から100%減)のランニングコストを削減社内便の削減事例:年間約40万円(改善前から60%程度減)のランニングコストを削減まとめ経費削減は利益率の向上により、 組織全体の強化を可能にする重要な経営戦略のひとつです。
そのためまずは、経費削減の主な目的について紹介します。
経費削減を行う最大の目的は、事業活動における利益率を高めることにあります。
同じ売上高でも不要な支出の減少により利益が増え、会社に残る資金が増えることで、財務体質の強化や安定した経営基盤の構築が可能になります。
さらに、その資金を新規事業や成長分野への投資、設備更新、人材育成、研究開発などに回すことにより、競争力の強化や市場シェアの拡大、ブランド価値の向上といった好循環が生まれます。
また、利益率の高さは投資家や金融機関からの評価にも直結し、資金調達の条件改善や株価の安定にもつながります。
経費削減のプロセスそのものが、業務フローの見直しにつながります。
たとえば、社内便の回数調整や 、ペーパーレス化などの改善を行うことで、日々の業務がスムーズになり従業員の生産性が向上します。
これは同時に、残業時間の削減や働き方の改善にもつながります。
さらに、全社にまたがるプロジェクトとして 期待できます。
削減の目的や方法を全社的に共有し、社員一人ひとりが経費削減に向けた当事者意識を持つことで、部門間の壁を超えた協力関係が生まれやすくなります。
経費削減の取組は、単なる数字合わせの作業ではなく、組織文化をポジティブに変えていくきっかけにもなり得るのです。
経費削減は単なる支出の圧縮にとどまらず、企業の持続的な成長と競争力強化にも直結する重要な取組です。
ここでは、具体的に経費削減を検討するうえで押さえておきたいポイントを紹介します。
経費削減を効果的に進めるためには、どの支出を見直すべきかを判断するための基準を明確にしておくことが重要です。
この基準があいまいなままだと、削減の対象が感覚や思いつきに左右され、効果が限定的になってしまいます。
見直し基準の例としては、以下のような観点が挙げられます。
・費用対効果:支出額に見合った成果や価値が得られているか
・業務への影響度:削減によって業務品質や生産性がどの程度変化するか
・代替手段の有無:同等の効果をより低コストで実現できる方法があるか
こうした基準をあらかじめ設定しておくことで、支出項目を客観的に評価し、削減の是非を判断しやすくなります。
経費削減を進める際には、どの支出から削減に着手するか、優先順位を明確にすることが大切です。
まずは支出の全体像を把握し、どの費目が大きな割合を占めているかを把握するところから始めると良いでしょう。
総務部の場合、特に支出割合が高いのはオフィス関連費用(家賃や共益費)、通信・光熱費、備品や消耗品の購入費、外注サービス (オフィス清掃やITインフラ)の費用です。
これらを月次・年次の単位で比較・分析し、過去数年分のデータを並べてみると、変動の傾向や費用負担の大きい項目が浮かび上がります。
削減効果を最大化するためには固定費と変動費を分けて考えることが大切です。
固定費は削減の難易度が高い一方、削減できれば長期的な効果を見込めます。
たとえば、オフィス賃料の見直しや契約条件の交渉、不要スペースの縮小などは、すぐに取りかかるのは難しくても効果は非常に大きくなります。
一方、変動費は比較的短期間で調整が可能です。
たとえば、消耗品の購入方法変更、カラーからモノクロ印刷への切り替え 、外注サービスから社内対応への切り替えといった取組は、即効性が高く現場の工夫次第で成果が出やすいです。
削減案を検討する際には、業務品質への影響を忘れてはなりません。
コストを下げた結果、作業効率が低下したり、社員が業務に必要なリソースを確保できなくなったりするようでは本末転倒です。
短期的な効果だけで判断せず、削減後の運用イメージをシミュレーションし、現場の声を反映させながら経費削減を進めることが、長期的な成功の鍵となります。
オフィスにかかる費用は総務が使用する経費の中で最も金額の大きい費目で、賃料や管理費など、固定費ではあるものの削減効果も大きくなります。
ここでは、オフィス関連費用における、実効性の高い削減アプローチを紹介します。
リモートワークの普及に伴い、オフィス面積の縮小や立地変更は有効な手段です。
必要な人数分のデスクと会議スペースのみを確保し、リモートワークを活用することで、大幅なコスト削減が可能になります。
続いて、削減案として挙げられるのは家賃や管理費の価格交渉です。
成功させることはやや難しいですが、契約更新時や近隣相場の変動に合わせて家賃の減額を打診することで、長期的な負担軽減が期待できます。
人件費をはじめ、人事労務関連のコストは企業における最大の費目であり、その最適化は経営効率の向上に直結します。
バックオフィス部門も例外ではなく、運用を最適化することにより効果的なコスト削減が見込めます。
ここではバックオフィス体制にフォーカスし、効率的かつ持続可能な形で経費削減につながる運用アプローチを紹介します。
まずは、人員構成の見直しです。
各業務に適切な人員体制で取り組めているか、業務分掌は妥当かを今一度確認し、体制や業務の割り振りの変更で改善が見込めないか精査しましょう。
正社員の業務の一部を派遣社員や業務委託に切り替えることで、コスト削減を行うだけでなく、正社員の時間をより戦略的な業務に使えます。
業務のDX化やAIの活用によって定型的な作業を自動化すれば、作業時間と人的リソースの双方を削減可能です。
こうした取組は単なる経費削減にとどまらず、生産性の向上にも直結します。
購買コストは日々の業務に密接に関わる支出であり、管理方法次第で着実な削減効果が見込めます。
ここでは、物品や消耗品の購入における無駄を省き、効率的にコストを抑えるための具体的アプローチを紹介します。
より安価な代替品の採用や、まとめ買いによる経費削減は、一度の効果が小さいながらもすぐに取り組める方法です。
また、購買先を一元化して取引量を増やせば、価格値引きの交渉力や購買業務の効率も高まります。
日常的な物品購入や消耗品の利用は、ルールの有無でコストが大きく変わります。
消耗品利用に関する社内ルールの策定や、ペーパーレス化などを推進し、備品の消費量と必要量を適切に管理することは、購入費用だけでなく保管スペースの削減にもつながります。
たとえば、使用済みの消耗品を中古備品として再利用することで、実際に経費削減の成果をあげている社内ルール策定事例もあります。
IT・システムにかかる費用は契約や運用の見直しによって短期間で効果を出すことができ、適切な管理によって長期的な経費削減にもつながります。
ここでは、無駄を省きつつ業務環境の質を維持するための実践的なアプローチを紹介します。
IT・システム関連費用は、契約内容や利用状況を見直すことで大幅な削減が可能です。
不要になったライセンスやサブスクリプション契約を解約し、利用頻度の低いサービスは無料版や低価格プランへの切り替えを検討しましょう。
社内システムの統合も有効です。
複数部門で別々に利用しているツールを統一すれば、ライセンス費用だけでなく、保守管理の手間やコストも減らせます。
水道光熱費や通信費は日々の運用改善によって無理なく削減でき、積み重ねが長期的なコスト低減につながります。
ここでは、固定費の見直しと日常的な省エネ・節約施策の両面からアプローチを紹介します。
光熱費や通信費は日常の工夫で継続的に減らすことができます。
たとえば、照明のLED化や、不要な通信回線の解約で毎月の固定費を減らせます。
節電や節水の呼びかけを社内で徹底することも有効です。
アナログな手法ではありますが、スイッチ・水道付近への張り紙や全社メールでの呼びかけなど、従業員に日頃から節約の意識を持つよう働きかけることで、一定の経費削減が見込めます。
会議や出張に伴う交通費は、運用方法の工夫次第で着実に抑制でき、同時に業務効率の向上も実現できる領域です。
ここでは、オンライン化と出張計画の最適化という二つの視点から効果的な削減アプローチを紹介します。
出張の交通費や宿泊費は、利用サービスを固定化しない方がコストを抑えられる場合があります。
従業員がそれぞれ比較サイトなどを活用し、出張のタイミングに応じた手配先を選択することで、経費削減を行っている例もあります。
出張が必要な場合でも、訪問先をまとめて効率的に回るスケジュールを組む、交通手段を割安なものに切り替えるなど、計画段階での一工夫が経費削減につながります。
自社総務の工夫だけで実現できるコスト削減に限界があるのであれば、総務のプロにアウトソーシングすることも有効な手段です。
社員対応から業務委託に切り替えることで、採用やマネジメント、販売管理に係る経費を削減しつつ、既存社員のタスクを減らせます。
総務組織を改革するにも人員や時間が足りないという場合は、一度プロに任せて、先に十分なリソースを確保してから経費削減の取組に進んでいくのも良い考え方です。
アウトソーシングの他にも、コンサルティングという形で経費削減の負担を減らす方法があります。
外部からプロの視点を取り込むことで、自社で採用している既存社員や派遣社員の業務経験を活かしつつ、経費削減に向けた業務整理や組織改革を進めていくことができます。
今の総務組織で経費削減を行っていきたい、改善を行う風土を構築していきたいという場合には総務専門のコンサルティングが有効でしょう。
自律型総務とは、単なる業務遂行を超えて、総務自らビジョンを持ち、事業利益の拡大に貢献する総務組織を指します。
自律型の組織作りができていれば、総務メンバーが自発的に経費削減の施策を考え、積極的に実行していくことができるようになります。
そういった組織への改革を行うためにも、コンサルティングやアウトソーシング、研修を活用して従業員全体に働きかけることが注目されています。
経費削減は企業の健全な成長を支える重要な施策ですが、進め方を誤れば逆効果となりえます。
ここでは、典型的な失敗パターンと、その回避策を紹介します。
経費削減は企業にとって重要な取組ですが、その進め方を誤ると、短期的な成果は得られても、中長期的には逆効果になるケースがあります。
たとえば、過度な経費削減によって社員のモチベーションが低下することや、必要な業務まで削ってしまうことによって、サービス品質や顧客満足度が低下してしまうことがあります。
こうした失敗は、経費削減の目的が「短期視点のみ」に偏ってしまうことで起きる傾向にあります。このような失敗を防ぐためには、削減の基準を「企業の成長にとってプラスになるかどうか」という視点で判断することが欠かせません。
また、現場の社員を巻き込みながら進めることも重要です。
経費削減は、総務部や経営層だけの課題ではなく、全社的な協力がなければ継続的な効果は見込めません。各部署の現場でしか分からない改善案や無駄の発見も多くあるため、全社員が意見を出し合える場を設け、透明性ある進行を心がけましょう。
経費削減を行った後に効果測定や情報共有が行われず、次の削減が行われなくなったり、経営に改善結果が共有されなかったりすることもありがちな失敗です。
労力をかけて取り組んだ経費削減も効果が不明瞭なままだと、「やっても意味がない」という空気が社内に広がってしまい、取組が長続きしません。
こうした事態に陥らないよう、正しく削減効果を測定・可視化する仕組みを持つことも大切です。
成果が見える形になれば従業員の達成感が高まり、さらなる改善意欲につながります。
ゼロインでは過去に数多くの経費削減を実現してきました。
この記事で解説したポイントを活用し、経費削減へとつなげた事例をいくつか紹介します。
課題:給茶機メンテナンス費用が月数万円
施策:給茶機を廃止してパウダー飲料に変更
この事例では「福利厚生削減」と受け取られないために「社員が好きなドリンクを選べる制度」として広報したことがポイントです。
試飲会や人気投票も実施し、コストカットを行いながらも社内でポジティブな印象を持たれる工夫によって、100%もの経費削減を成功させています。
課題:社内便のコスト削減が必要
施策:配送頻度の削減
配送頻度の削減など、他の業務に直接影響する経費削減については少し慎重にならなくてはいけません。
この事例ではいきなり大幅な削減を行うのではなく、3か月のトライアルで段階的に実施していくことで、他業務への影響を調整しました。
また、関係部署との合意形成や事前の広報活動を丁寧に行ったことにより、クレームもなくスムーズな運用変更ができました。
経費削減やコストカットは、単なる支出の抑制ではなく、企業全体の業務改善や事業成長にも直結する重要な取組です。
特に総務では、削減できるコストが多岐にわたり、不要な経費を単発的に削るのではなく、業務フローや働き方の改革と結びつけて行うことで、削減効果を持続的に保てます。
そうした経費削減の取組を実現するためには、総務部門が主体的に動くことが不可欠です。
単なる経費の管理者にとどまらず、今後は自律的に課題を発見し、改善策を提案・実行できる自律型総務への変革が重要になります。
経費削減をより推進するため、自律型総務に興味のある方はゼロインにお気軽にご相談ください。






