「総務業務の効率化や自動化を図りたい」とお考えの方は多いのではないでしょうか。近年は労働力不足の深刻化や働き方改革への対応が求められ、総務でもAI(人工知能)の活用が注目されています。しかし、「具体的にどのような業務にAIを導入すればいいのか」「コストに見合う効果が得られるのか」「失敗しないためには何に気をつけるべきか」など、総務でのAI活用について疑問や不安を抱えている方も少なくありません。
そこで本記事では、総務アウトソーシングやコンサルティングサービスを25年以上提供しているゼロインが、総務におけるAI活用のメリットやAIを活用できる業務を踏まえながら、導入の流れや注意点をわかりやすく解説します。
目次
総務にAI活用が求められている背景労働力不足と働き方改革への対応DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速総務業務の複雑化総務でAIを活用することによって得られるメリットルーチン業務の効率化・自動化コスト削減とリソースの最適配分データ活用による意思決定の高度化総務がAIを活用できる具体的な業務文書・契約書管理社内問い合わせ対応オフィス環境の最適化リスク管理・セキュリティ対策経費精算・支出管理総務でAIを活用する際に注意するポイント導入目的・目標の明確化データセキュリティとプライバシー保護への注力社内の理解・スキル習得への支援総務にAIを導入するステップステップ1:課題と目標の洗い出しステップ2:AI活用領域の選定ステップ3:パートナー・ソリューションの選択ステップ4:スモールスタートで検証ステップ5:運用定着と段階的な拡大まとめ社会の変化に伴い、企業のバックオフィス業務はさらなる効率化・自動化を迫られています。総務も例外ではなく、これまでアナログ中心で行ってきた業務フローや管理体制を見直す必要があります。以下では、総務にAI活用が求められている背景を3つ紹介します。
日本における生産年齢人口の減少は、企業にとって人材確保の難易度を上げる大きな要因です。
・総務で発生する定型業務に割く人手が足りない
・働き方改革の推進に伴い、残業抑制や在宅勤務への対応が欠かせない
こうした状況下で、AIを活用した業務の自動化・デジタル化は、限られたリソースを有効に活用するためのカギとなります。
企業を取り巻く競争環境が激化する中、データを活用した意思決定や業務プロセスのデジタル化が求められています。それに伴い総務でも、紙中心の業務フローからクラウドサービスやAI活用へ移行するケースが増加しています。総務でAI活用を推進することはDXの足がかりとして注目されているだけでなく、社内全体の生産性向上に直結します。
総務には単なる事務処理だけでなく、より戦略的な役割が求められるようになっています。働き方の多様化やコンプライアンス強化への対応、人的ミスの低減など、業務品質に対する要求はかつてないほど高まっています。こうした中で、膨大な情報処理や複雑なフロー管理に人手だけで対応するには限界があり、業務品質とスピードを両立する手段としてAIの導入が強く求められるようになってきました。
ここでは、実際に総務でAIを活用することで得られるメリットを3つ紹介します。
総務では、書類やデータの確認、受付対応、問い合わせ対応など、日々繰り返し発生するルーチン業務が多く存在します。OCR(光学文字認識)技術による紙書類のスキャン・テキストデータへの変換や、チャットボットによる社員からの問い合わせ対応の自動化を導入すれば、大幅な効率化・自動化が見込め、担当者がコア業務にかける時間を創出できます。
AIを導入することで、印刷や郵送といった単純作業にかかる人的リソースや時間を圧縮できます。また、ミスの修正やダブルチェックにかかる手間や時間を無くすことができるだけでなく、ヒューマンエラーによる損失やフォロー対応も最小限に抑えられます。結果として、総務内の余剰リソースをコア業務に振り分けたり、総務人材を他部署に振り分けたりすることで、リソースの全体最適化が図れます。
総務でAIを活用する過程で、経費や備品管理、設備運用のデータが蓄積・可視化されやすくなります。これにより、不要なコストがかかっている部署や工程の早期発見や、社員からの問い合わせ内容や稟議の傾向分析を通じた業務フロー改善などが可能になります。こうしたデータドリブンな経営判断は、意思決定のスピードと精度を高めます。
ここからは、総務で特にAIとの相性が良いと考えられる5つの業務を紹介します。
多くの企業が紙の書類や契約書を多数抱えており、それらを保管・検索する作業に多くの時間を要しています。そこで活用が期待されるのが、OCRや電子契約サービスなどを通じた電子化の取り組みです。AIを使えば、書類に含まれるキーワードの抽出やデータの登録を自動化できるため、検索や整理にかかる時間が格段に低減されます。
総務への問い合わせといえば、福利厚生や申請手続き、備品の使い方など、定型的な内容が多く含まれます。これらのFAQをAIに学習させたチャットボットを導入すれば、社員からの問い合わせに対する即時対応が24時間自動で可能になります。その結果、総務担当者が手動で対応する必要のある問い合わせ数が大幅に減少します。また、社員にとっても知りたい情報をすぐに得られるようになるため、総務の工数削減と従業員の利便性向上を同時に達成できます。
オフィスの快適さとコスト削減を両立させたい場合には、IoTセンサーとAIを連動させる方法が有効です。これらを連動させることで、省エネ化や、会議室やフリースペースの利用データの可視化が可能になります。これにより、電力消費と設備稼働のバランスをとりながら、社員が快適に働けるオフィス環境を実現できます。
企業におけるセキュリティ面でのリスクは年々増加していますが、AIを活用すればリスクの早期発見が容易になります。たとえば、社内ネットワークのアクセスログを常時監視し、不審な動きがあればすぐに通知するといった仕組みを構築することが可能です。また、入退室データや監視カメラの映像とAIを連携することで、内部不正や外部からの侵入を早い段階で察知でき、ガバナンスの強化や事故発生リスクの低減に役立ちます。
経費精算や支出管理も、AIとの親和性が高い領域の一つです。人力による領収書や請求書の仕訳を自動化することで入力ミスのリスクを軽減できます。さらに、不正経費や異常値を検知すると担当部門に自動で通知が届く仕組みを導入すれば、より厳格なチェック体制を構築できるでしょう。結果として、正確かつスピーディな経費精算が実現し、担当者の負荷を大幅に減らすことができます。
総務におけるAI導入には、業務効率化やコスト削減など多くのメリットが期待できます。しかし、その一方で、準備や運用が十分でなければ導入後の成果が伸び悩んだり、トラブルが発生したりする恐れもあります。ここでは、特に重要となる3つの注意点を順に解説します。
まずは、どの業務をどの程度効率化・自動化したいのかを、数値や具体的な指標を用いて可視化し、目標を設定することが大切です。その際、総務メンバー内でのすり合わせを行い、導入後の方向性がブレないよう管理する必要があります。もし目的が不明確なまま進めてしまうと、成果の測定や改善が難しくなるだけでなく、途中で導入自体が頓挫してしまう可能性もあるでしょう。
AIの導入に伴い、クラウドサービスや外部ベンダーを利用するケースが増えると、情報漏えいのリスクも高まります。そのため、アクセス権限の設定やデータの暗号化、ログの管理といった基本的なセキュリティ対策を徹底することが欠かせません。特に、個人情報や機密文書を取り扱う場合には、関連する法令を踏まえた運用ルールを整備し、内部監査やセキュリティ評価を通じて常にプライバシー保護に注力することが重要です。
AIを導入すると、従来の業務フローや操作方法が大きく変わる場合があります。そのため、社員が新しい運用方法に戸惑わず、円滑に使いこなせるように研修やマニュアルを充実させる必要があります。導入初期のフォローアップを行うことで、不安や抵抗感を軽減できるでしょう。また、経営層や管理職から導入の目的や意義を社内に向けて発信することで、現場との温度差を埋められます。
AI導入の検討を始めるとき、どのような手順で進めればよいのかを把握しておくことが重要です。ここでは、無理なく段階的に導入を進めるための5つのステップを紹介します。
最初に、総務業務を細かく分析し、時間やコストの面で特に非効率な部分を明確にする必要があります。「問い合わせ対応に月○時間かかっている」「稟議承認に平均○日要している」といったように、具体的な数値を出すことで課題が可視化され、AI導入による数値目標を設定できます。併せて、総務メンバーへのヒアリングを行い、AI活用によってどのような効果を期待しているのかを整理しておくことも大切です。
洗い出した課題の中から、AIと相性が良く、導入効果が高いと思われる業務を選定します。たとえば、文書管理や経費精算、チャットボット対応など、すでにAI活用の事例が豊富にある業務は導入ハードルが比較的低いでしょう。また、既存システムとの連携やカスタマイズの必要性なども検討し、自社のリソースやスケジュール感に合った領域を見極めることがポイントです。
AI活用の専門知識や人員が社内に不足している場合は、信頼できる外部ベンダーやコンサルティング企業に依頼する選択肢も考えられます。過去の導入実績や事例、サポート体制などを複数社で比較検討し、セキュリティ要件や費用対効果、導入スケジュールなどを総合的に評価しましょう。パートナー企業を決めるにあたっては、実際の担当者レベルでスムーズにやりとりができるかどうかも確認しておくと安心です。
最初から全社的に導入しようとすると、現場での混乱や予算オーバーのリスクが高まる可能性があります。そのため、まずは一部の部門や限定的な業務を対象にスモールスタートし、実際の稼働データを取得しながら効果や問題点を検証することが望ましいでしょう。得られた成果や課題を踏まえ、必要に応じて修正を加えてから、本格的な導入へとステップアップしていく形がリスクを最小限に抑えるうえでも有効です。
スモールスタートして成功事例を作ったら、それを社内に共有し、導入の価値を広めるとともにマニュアルや研修制度を整備して、現場レベルでAIを使いこなせる環境づくりを進めます。運用が定着し始めた段階で、必要に応じてシステムをアップデートしたり、新たな機能を追加したりして活用領域を少しずつ広げていくことがポイントです。こうした段階的なアプローチを取ることで、AI活用のメリットを確実に増やし、最終的には組織全体の生産性向上につなげることができるでしょう。
総務でのAI活用は、ルーチン業務の効率化やコスト削減、データドリブンな経営判断を実現する可能性をもっています。AIの導入によって限られたリソースを最大限に活用し、組織全体の生産性を上げることは多くの企業にとって重要なテーマといえるでしょう。
一方で、明確な導入目的やセキュリティ対策、社内浸透施策などを怠ると、スムーズな導入・活用が難しくなるのも事実です。まずは小さな範囲から導入し、段階的に拡大していくアプローチが成功のカギとなります。
ゼロインは、総務の効率化や可視化を実現するためのサポートを行っています。少しでも興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせ・資料請求ください。